Boaring Ant

林業する庭

本作は、恵比寿のマンション最上階にあるベランダに設けられた、個人邸の植栽である。
遮るもののない開けた空間には、建物を伝って風が吹き上げ、強い日照と乾燥、そして建物の高低差による気流が特徴的な環境を形成している。
この都市の住宅環境を山腹に起こりうる景色として見立て、その中で生まれる植栽と暮らし手との関係性や体験を重視した設計を行った。 依頼主はかつて林業に携わっており、自然の中で育った原体験や、現場での造林の経験などを背景を持つ。
それを踏まえ本植栽では、植栽を単なる鑑賞の対象としてではなく、観察・剪定・間伐といった行為を通じて、家族、特にお子さんと植物が継続的に関わり続けられる場を目指した。 幼少期のこどもにとって、このベランダは、依頼主がかつて見てきた景色や林業の視点を手がかりに、自然と出会い、関係性を模索する最初の場となり得る。 植栽には、植林にも用いられる山林苗を多く取り入れ、遷移初期に見られる群雄割拠の状態、個体ごとの競争と共存が同時に進行する動的な段階を表現している。
また管理においても、植栽の状態だけでなくその時々の価値観や家族との関係性に応じて、家族とともに方針を確認しながら作業を行うことで、管理を通じた学びの場となるよう意図されている。 なかでも剪定や間伐といった行為は、単に植物の外観を整えることにとどまらない。 ある植物を切ることで、光や風の通り道や空間の広がりを生み出し、他の植物にとっての居場所や生長の余地をつくり出す。 こうした行為を通じて、個々の植物だけでなく、植栽全体の関係性や変化に目を向ける複層的な視点からの植栽管理が実践されている。 季節の行事の際には剪定枝や花卉を用いてオーナメントをつくるなど、家族や友人、近隣の方々とのコミュニケーションの場としても機能しているようだ。 都市のベランダという限られた空間にありながらも、その土地の空間としての立ち位置などを捉え直すことで、暮らし手と住む場所との関係性を継続的に醸成していく場となっている。